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東南アジア·オセアニア地域 定点観測 主要7ヶ国における最近の税制改正と執行状況〈上〉 ~2024年度版~

PwC税理士法人 パートナー 神保 真人
PwCインドネシア パートナー 菅原 竜二

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東南アジア地域の各国税務当局は、さらなる経済の回復と成長を見据えて意欲的な税収目標を掲げ、その目標達成のために税務執行を強化する傾向がますます顕著である。このため、東南アジア地域の各国で企業活動を行う日系企業は、不安定な税務執行や突然発表される規則改正などの困難に依然として直面している。

経済協力開発機構(OECD)による「経済のデジタル化から生じる税務上の課題に対処するための二つの柱」における第2の柱(いわゆるグローバル・ミニマム課税)に関する税制改正は昨年から引続き世界各国で行われており、東南アジア地域では導入にかかる閣議決定や詳細の規定など具体的な税制改正が進んでいる。QDMTTについても議論が進んでおり、オーストラリアやベトナムでは2024年からの導入が決定している。2025年からはさらに多くの国が導入を進めることが想定されるため、当地域の他国の動向も注視していく必要がある。OECDは第1の柱/利益Bに関する追加ガイダンスを2024年6月17日に公表しており、グローバル・ミニマム課税と同様にこちらの制度導入にかかる動向も注視していく必要がある。

税務ガバナンスの観点からは、グローバル・ミニマム課税の対応など本社との連携がますます重要となっている。また、東南アジア地域の各国税務当局のDX化が昨今急速に進んでおり、当該DX化の税務執行への影響などについて慎重に状況を見守る必要がある。この2つの側面から税務ガバナンスの強化やIT導入対応等が今後当該地域において、より重要かつ喫緊の経営課題になると想定される。

本稿では、例年通り東南アジアの主要6ヶ国(シンガポール、インドネシア、タイ...