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中堅企業のためのローカルファイル作成実務(下)

 税理士 石井 徹

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はじめに

ローカルファイルは、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類であり、前事業年度において一の国外関連者との間で行った国外関連取引の合計金額が50億円以上又は無形資産取引の合計金額が3億円以上である法人は、確定申告書の提出期限までに作成又は取得し、保存しなければなりません(移転価格同時文書化)。

移転価格税制に係る文書化制度導入以前から、自主的に同時文書化に対応していた企業や適切なプライシングポリシーを検討・導入していた企業も多い一方で、文書化制度導入を受け、ローカルファイルを作成・保存していたにもかかわらず、その後の移転価格調査において内容の不備を指摘され、移転価格課税を受ける結果となってしまう企業も散見されます。

本稿では、外国に子会社を有する日本の中堅企業を念頭に、ローカルファイル作成の実務上の留意点について、移転価格リスク管理の観点から、移転価格調査における調査官の着眼点もふまえて解説をします。

1 ローカルファイル作成の流れ

(1)ローカルファイルの全体像

ローカルファイルの書類としては、「国外関連取引の内容を記載した書類」と「国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するた...