BEPS包摂的枠組みによる第1の柱「利益B」の最新動向 PART2
デロイト トーマツ税理士法人 シニアアドバイザー 山川 博樹
デロイト トーマツ税理士法人 パートナー 佐伯 拓也
デロイト トーマツ税理士法人 マネジャー 武田 健吾
OECD/G20のBEPS包摂的枠組み(以下「BEPS包摂的枠組み」)が打ち立てた「2本の柱」による国際課税制度改革の議論が目下精力的に進められている。改革案のなかで注目されるのが、基礎的販売・マーケティング活動を対象とした移転価格の簡素化・合理化アプローチ「利益B」である。利益B制度は、その規模にかかわらず広範囲に適用される可能性があり、2024年7月末現在、制度枠組みに関する議論が依然として続いており、課税執行の実務に関する具体的な議論には至っていない。
利益B制度とは、「適用対象基準を満たす基礎的な販売取引について、利益水準をあらかじめ決定する新たな移転価格ルール」である。基礎的な販売・マーケティング活動に共通の事実パターンが認められることを背景とし、当該活動に関する移転価格税制の執行を合理化・簡素化することを目的としている。利益Bは、各国地域が自国の内国法人を対象として、2025年1月1日以降に開始する事業年度から制度の導入が可能である。そのため、もし最速で導入される場合、企業は迅速に対応する必要がある。
2024年2月19日にBEPS包摂的枠組みが公表した利益Bに関する報告書(以...