外国税額控除の実務(下)~申告までの業務フローと留意すべきポイント~
公認会計士・税理士 佐和 周
(2)控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類
①源泉徴収の場合
海外からの入金について、現地で源泉徴収された場合、前号1.のとおり、入金仕訳の検証には、タックス・レシート(源泉徴収票など)が必要になります。一方、上記(1)のとおり、タックス・レシートについては、申告にあたっても「控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類」等という位置付けで、保存が必要になります( 法法69 ㉕、 法規29の4 ②一)。
これは端的には、外国法人税の課税事実や納付事実を証明することができるものを指し、具体的には、申告書の写しまたは現地の税務官署が発行する納税証明書等のほか、更正若しくは決定に係る通知書、賦課決定通知書、納税告知書、「源泉徴収の外国法人税に係る源泉徴収票」その他これらに準ずる書類またはこれらの書類の写しが含まれます( 法基通16--3--48 )。
この点、実際には、どのような書類等を保存しておけばよいのか、判断に迷うケースもあります。国によっては、「源泉徴収票」というような定型の様式がないためです。また、現地で源泉税を一括して納付している関係で、源泉徴収票では個別の送金に係る源泉税の額が読み取れず、代替的に入金元(送金側)が作成した様式によらざるをえない場合もあります。
このようなケースでは、まずは入金元に個別の送金に対応する源泉徴収票が入手できないかを確認し、それが不可の場合、「仮に個別の送金に係る源泉徴収票があれば、そこに記載されるであろう項目(発行者名・受取人氏名・所得の種類・金額・源泉税率・源泉税額・差引き支払額・支払日など)」が記載された書類を入手し、保存するという対応をとらざるを得ません。その際に重要になるのは課税事実や納付事実を証明することができることであり、逆にいうと、入金元が独自に作成した書類だけでは税務調査で問題視される可能性があるため、できるだけ、現地当局への納税額に紐付ける(その内訳として確認できる)ようにすることが重要と考えられます。...