[全文公開] 国際税務の英単語 MNE Group(多国籍企業グループ等)
佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周
本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものです。 前回 までは一般的な税務用語を扱ってきましたが、今回から当分の間、グローバル・ミニマム課税(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税)に関する用語を解説していきます。
グローバル・ミニマム課税の関係では、以前にGloBEルール( Global Anti-Base Erosion rules )に関係する用語をいくつか解説しました(2022年3月号~2023年1月号)。その後、グローバル・ミニマム課税制度のうち、所得合算ルール( IIR:Income Inclusion Rule )については、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」として、日本でも法制化されています(令和5年度税制改正)。これにより、OECDのモデル・ルール( Global Anti-Base Erosion Model Rules ( Pillar Two ))における用語に対応する日本語が新たに登場しているため、改めて、用語の日英対比を考えたいと思います。
前置きが長くなりましたが、今回は MNE Group という用語を選びました。これに対応するのは「多国籍企業グループ等」という用語です。「多国籍企業グループ等」とは、単純化すると、その企業グループ等に属する会社等の所在地国が2以上ある企業グループ等をいいます。
ここでいう MNE は、 m ulti n ational e nterprise の略なので、「多国籍企業」という意味です。また、 Group に対応するのは「企業グループ等」という用語で、これは、シンプルには最終親会社の連結財務諸表に含まれる企業集団をいいます(ただし、重要性等の理由により連結の範囲から除外される会社等を含みます)。
なお、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の対象となるのは「特定多国籍企業グループ等」ですが、これは、多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度において、その総収入金額が7億5千万ユーロを円換算した金額以上であるものなどをいいます。なお、残念ながら、これに対応する英語はないようなので、 an MNE Group that has annual revenue of EUR 750 million or more ... など、長々と説明するほかないものと思われます。