[全文公開] 年頭所感『社会の期待に応え、更なる信頼を創る』
日本公認会計士協会 会長 茂木 哲也

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
平素より当協会の活動にご理解ご支援を賜り、心から御礼申し上げます。
会長に就任して約2年半が経過しました。この間、タグライン「信頼の力を未来へ」に込めた、「社会に新たな信頼を創ることで、より良い未来に貢献する」という想いを実現すべく会務運営に邁進してきました。これまで着実に会務を遂行できたことは、ひとえに皆様のご支援とご協力の賜物であり心から感謝申し上げます。年頭に当たって、未来に信頼のバトンを繋げていくために当協会が取り組む重要な施策について述べさせていただきます。
1.上場会社等監査人登録制度の的確な運用
上場会社の監査を担う監査事務所に対してより高い規律付けを行うための「上場会社等監査人登録制度」の導入を受け、当協会は、監査事務所に対する指導と支援の両輪で対応を進めてきました。法令において定められたみなし登録上場会社等監査人の登録申請期限である2024年9月末の段階で、登録を受けた監査事務所は112事務所となりました。引き続き、上場会社等監査人に対し、整備した体制の運用状況や品質管理状況の確認を行い、自主規制機関として、今後も社会の期待に応えてまいります。
加えて、上場会社監査の担い手として中小監査法人が果たす役割が大きくなっていることから、当協会は、上場会社の監査を担う中小監査法人の情報開示の充実を促進するべく、情報開示一覧サイトの公表に向けた準備を進めており、監査品質の更なる向上に向け、各種支援策の実施や指導に一層注力していきます。
2.サステナビリティ情報開示・保証の制度づくり
サステナビリティ情報の開示・保証基準の開発が世界中で急速に進んでおり、我が国においても金融審議会のワーキング・グループにおいて開示・保証制度の導入に向けた重要な検討が進められています。
公認会計士がサステナビリティの領域でリーダーシップを発揮し、制度整備に貢献していくべく、当協会は、これまで培ってきた知見を基に、倫理、自主規制、研修、登録などの多岐にわたる分野を念頭に、在るべき制度的枠組みの検討を進め、制度設計の議論の場で関係団体等と積極的に対話してまいります。
また、人材育成や能力開発を更に進めるべく、昨年策定したJICPAサステナビリティ能力開発シラバスに沿ったウェビナーの継続的な開催や、公認会計士のサステナビリティに関する能力を担保する仕組みの確立に向けた検討を行ってまいります。
3.会計リテラシーの向上を通じた社会貢献
先般の公認会計士法改正により会計教育が当協会の会則記載事項として位置づけられ、公認会計士が果たす役割の重要性がますます高まっています。
当協会は、会計リテラシーの向上を実現していくべく、教育関係者等と連携を深めながら、日々子どもたちと接している教員を対象としたセミナーの開催や親しみやすい教育コンテンツの作成などを通じて、幅を広げた面での活動を進めていきます。
4.税制の在り方に関する検討
近年、経済のグローバル化・デジタル化の進展により、伝統的なPE概念では源泉地国において事業所得課税が適切になし得ないという課題に直面しています。このような状況を踏まえ、当協会では、伝統的なPE概念の問題点の分析と課題解決の方向性を検討し、2024年2月に研究報告を公表しました。
また、当協会では、昨今の社会情勢を踏まえて今後の税制改正の方向性や在り方について検討を行い、毎年、税制改正意見書を策定しています。本年度は、国際租税の観点から、「外国子会社合算税制における経済活動基準を我が国企業の経済活動の多様化に合わせて見直すこと」を重点意見の一つに掲げています。
引き続き、環境変化をいち早く捉え、公正な経済・社会の発展を促す観点から、国際租税をはじめとする税制に関する調査研究や関係者との対話に注力してまいります。
公認会計士試験の願書提出者数は2015年以降増加傾向にあり、資格の意義や魅力に対する理解が浸透してきた結果であると言えます。
公認会計士を取り巻く環境が変化し期待される役割も拡大している中で、これからも公認会計士が社会から信頼され続けるためには、環境の変化に適応して絶えず資質を向上させていくことが重要です。公認会計士試験から継続的専門能力開発に至る一連の過程を一体的・包括的に検討しており、改革のロードマップを明確にしていきます。
公認会計士が社会の期待に応え、信頼の力でより良い未来の創造に貢献できるよう、業界全体として取り組んでまいります。関係の皆様には、引き続き、温かいご支援とご指導をいただければ幸いです。
末筆ながら、皆様のますますのご健勝とご活躍を祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。