[全文公開] domestic news 与党 令和7年度税制改正大綱を公表
与党は、昨年12月20日に 「令和7年度税制改正大綱」を公表 した。12月27日には閣議決定されている。大綱では国際課税関連の内容として、①グローバル・ミニマム課税への対応、②外国子会社合算税制等の見直しなどが行われているほか、消費課税の中で、③外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直しなどが行われている。
なお、大綱の「第一 令和7年度税制改正の基本的考え方、3.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し、(3)経済のグローバル化・デジタル化への対応」の中で、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への2本の柱の解決策のうち、第1の柱における移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化(いわゆる利益B)については、「今後、国際的な議論及び各国の動向を踏まえて対応を検討することとし、当面は実施しない」とし、「他国が本簡素化・合理化を実施する場合については、現行法令及び租税条約の下、国際合意に沿って対応する」としている。
■グローバル・ミニマム課税に「UTPR」、「QDMTT」を創設
グローバル・ミニマム課税への対応の中では、「各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税(仮称)」(軽課税所得ルール、UTPR)と、「各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税(仮称)」(国内ミニマム課税、QDMTT)などが創設されている。この2つの制度は共に、令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される。
なお、国際最低課税残余額に対する法人税に係る適用免除基準として、「特定多国籍企業グループ等の判定対象会計年度が、特定多国籍企業グループ等に該当することとなった最初の対象会計年度開始の日以後5年以内に開始し、かつ、国際的な事業活動の初期の段階にあるものとされる対象会計年度に該当する場合等には、その判定対象会計年度に係るグループ国際最低課税残余額は、零とする」としている。
また、国内最低課税額に対する法人税に係る適用免除基準としては、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(いわゆるIIR)と同様に、「収入金額等に関する適用免除基準、一定の国別報告事項における記載事項等を用いた経過的な適用免除基準その他の特例を設ける」ほか、上記の国際最低課税残余額に対する法人税と同様に、「国際的な事業活動の初期の段階における適用免除基準を設ける」ことが示されている。
さらに、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等」(いわゆるIIR)についても、いくつかの見直しが行われており、例えば、「構成会社等の当期純損益金額に係る対象租税の額のうち外国子会社合算税制等の対象とされる他の構成会社等に係る調整後対象租税額に含まれる金額等の計算について、その対象に法人税等調整額を加える」とされており、国際最低課税額に対する法人税等の計算において、外国子会社合算税制の適用によって日本の親会社に課される税額を海外子会社にプッシュダウンすることについて、その額が会計上、「法人税等調整額」で計上されている場合でもプッシュダウンが行えることになる。
■CFC税制の所得合算が行われる事業年度が決まる月数などを見直し
また、GM課税の導入により、対象となる企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、令和7年度税制改正でも「外国子会社合算税制等の見直し」が行われている。
まず、(1)「外国関係会社の各事業年度に係る課税対象金額等に相当する金額は、内国法人の収益の額とみなして、その事業年度終了の日の翌日から4月(現行:2月)を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する」としており、外国関係会社の所得合算が、日本の親会社のどの事業年度に行われるのか決める外国関係会社の事業年度終了日翌日からの月数が、現在よりも後ろ倒しされ、その月数は(現在の2月から)「4月」となっている。
また、(2)「申告書に添付又は保存をすることとされている外国関係会社に関する書類の範囲」から、「①株主資本等変動計算書及び損益金の処分に関する計算書、②貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書」を除外することも示されている。
なお、上記の改正は、内国法人の令和7年4月1日以後に開始する事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の同年2月1日以後に終了する事業年度に係るものに限る。)について適用される。
ただし、「内国法人の令和7年4月1日前に開始した事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の令和6年12月1日から令和7年1月31日までの間に終了する事業年度に係るものに限る。)について、その外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4月を経過する日を含むその内国法人の同年4月1日以後に開始する事業年度において外国子会社合算税制の適用を受けることができる」という経過措置も設けられている。
(※なお、前述のGM課税における外国子会社合算税制のプッシュダウンや、上記の点については、 本号26ページから掲載の「グローバル・ミニマム課税における実務上の留意点と課題」 でも解説しています。)
■外国人旅行者向け消費税免税制度をリファンド方式に見直し
また、消費税の外国人旅行者向け免税制度については、令和6年度税制改正大綱で示された方針を踏まえ、「消費税相当額を含めた価格で販売し、出国時に持出しが確認された場合に輸出物品販売場を経営する事業者から免税購入対象者に対し消費税相当額を返金する『リファンド方式』」に見直すことなどが示されている。