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消費税の国際課税における税務リスクの低減

東京富士大学 客員教授・税理士 伴 忠彦

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はじめに

企業の海外取引が増加すると、法人税における国際課税はもとより、海外取引に係る消費税の税務リスクも大きくなります。内外判定や輸出免税など、海外取引に係る消費税の主な制度は、消費税における国際課税制度です。

企業としては、これらの制度の適用誤りを防ぐ対策が必要になりますが、消費税の国際課税に係るリスク管理は税目の性質上、企業の税務専担部署だけではチェックや統制が行き届きにくくなっています。消費税には、より取引現場に近いところで遅滞なく判定すべき事項が多くなっており、この点が法人税と大きく異なります。

本稿は、消費税の国際課税に係る税務リスク管理のために、企業グループ本社や本部機構の中にある税務専担部署(以下「税務グループ」という)と、より取引現場に近い取引担当部署との間での協力、協働の必要性やその方法、そして周知・共有することが望ましい消費税の基本的な仕組みについて考えてみるものです。

Ⅰ 消費税の国際課税リスクを低減する社内体制

1.消費税の国際課税

国際課税の分野とは、「競合する複数国の課税権を関係国間で適正に配分、調整する規定の集合体」といえます。非居住者や外国法人の国内源泉所得に係る...