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TP Controversy Report〈93〉 事業戦略と移転価格

EY税理士法人  竹内 茂樹

( 106頁)

スタートアップをはじめとする事業戦略による損失の扱いについて、移転価格上どのように考えればよいのか、悩んでいるご担当の方は多くいらっしゃいます。この点について、我が国法令はもとより通達等でも直接的には触れられていません。かといって、例えば、TNMMで単純に計算すると、本当にこの結果でよいのか、確信の持てないものになってしまいます。今回は、この事業戦略(スタートアップ等)について、移転価格上どのように考えていけばよいのかという問題を取り上げます。

1 我が国移転価格税制等のルール

(1)海外子会社設立費用との峻別¹

新規市場参入等で海外で新たに法人を設立する場合には、法人設立に係る費用が発生します。これについては、現地会社法にもよりますが、我が国同様、新規設立法人での創立費等として処理されるべきものであることが多いのではないでしょうか(我が国では、設立後、法人の費用(繰延資産等)として計上されます。)。そうすると、こういった場合には、まず、他のスタートアップコストから切り離した上で、これら費用は新規設立法人側で負担すべきということになります。

(2)法令及び通達等

上記(1)を除き、我が国法令及び...