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TP Controversy Report〈94〉 移転価格課税後の不服申立てと相互協議等
EY税理士法人 石川 智恵子
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はじめに
最近の税務調査体制はコロナ禍前に戻っており、国税庁が令和6年11月に公表した「令和5事務年度法人税等の調査事績の概要」によると、海外取引法人について課税上の問題を幅広く把握し、厳正な調査を行うとされています 1 。国外関連者との取引を重点的な対象とする法人税との移転価格同時調査が増えており、今回は我が国で移転価格課税の更正処分を受けた場合の救済手続、修正申告を行った場合の留意点等をご紹介します。
1 課税後の手続
移転価格課税を受けた場合、課税対象となった取引先の国外関連者はすでに所在地国での申告・納税を行っていることから、二重課税が発生します。我が国ではその救済手続として二重課税を解消するため、租税条約に基づいて相互協議を申し立てる手続と、課税処分を行った税務当局や国税不服審判所、裁判所に対して課税処分の取消しを求める不服申立手続があります。
相互協議の申立ては二国間租税条約を根拠としてお...