[全文公開] 国際税務の英単語 Minority-Owned Constituent Entity(MOCE)(被少数保有構成会社等)
佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周
本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、グローバル・ミニマム課税(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税)に関する用語です。
前々回 は構成会社等( Constituent Entity )や除外会社等( Excluded Entity )という用語を取り扱いましたが、今回は被少数保有構成会社等( MOCE:Minority-Owned Constituent Entity )という用語を解説します。「構成会社等」なのですが、「被少数保有」という意味で特別なものです。
前提として、国際最低課税額に対する法人税の制度でいう「構成会社等」は、基本的に連結等財務諸表において連結子会社に該当する会社等です。しかしながら、連結子会社の中には、最終親会社等( UPE:Ultimate Parent Entity )の所有持分に係る請求権割合が低い会社等もあります。「被少数保有構成会社等」というのは、端的にはそのような構成会社等を指す用語であり、シンプルにいうと、最終親会社等が直接または間接に有する所有持分に係る請求権割合が30%以下である構成会社等を意味します。
上記のとおり、「被少数保有構成会社等」は、 Minority-Owned Constituent Entity と訳します。このうち、 Constituent Entity (構成会社等)の部分は特に問題ないでしょう。一方、その前に置かれている minority-owned という表現はあまり見かけないものです。ただ、 minority ということは majority (過半数)を保有されていないということで、だからこそ「(被)少数保有」という表現が使われています。そして、どのくらい minor なものかというと、基準は上記のとおり「30%以下」です。
なお、被少数保有「構成会社等」は、構成会社等ではあるのですが、国際最低課税額に対する法人税の制度上、他の構成会社等とは区別されます。例えば、被少数保有構成会社等と他の構成会社等が同一国に所在する場合、それぞれ別個に国別実効税率等( Jurisdictional Effective Tax Rate )の計算を行うほか、グループ国際最低課税額( Jurisdictional Top-up Tax )の計算にあたっても、両者を合算することなく別個に計算することになります。