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グローバル・ミニマム課税における実務上の留意点と課題 第21回 IIR適用年度前の移転価格課税について、対応的調整により適用年度後にその構成会社等の租税の額が減額された場合の「再計算国別国際最低課税額」の計算の可否(Q&Aその8)

 税理士 秋元 秀仁

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略歴  旧大蔵省主税局、国税庁調査査察部調査課(国際/審理担当)、同課税部法人課税課、同審理室、東京国税局統括国税実査官(国際/富裕層担当)、玉川税務署長、東京国税局調査管理課長、国税庁長官官房監督評価官室長、札幌国税局総務部長、高松国税局長などを歴任。現在、税理士、青山学院大学大学院非常勤講師、財務省「新BEPS研究会」委員、国税庁税務大学校講師。

Q12  IIR適用年度前の移転価格課税について、対応的調整により適用年度後にその構成会社等の租税の額が減額された場合の「再計算国別国際最低課税額」の計算の可否

≪検討≫

1 構成会社等に係るグループ国際最低課税額の計算

2 再計算国別国際最低課税額

3 「過去対象会計年度」の意義

4 「過去対象会計年度に係る納付すべき対象租税の額」の意義と本件の過年度減額処理に対する再計算規定適用の可否

5 本件の進行年度減額処理に対する再計算規定適用の可否

6 国外関連者(構成会社等)の一括減額処理と当期のETR計算

Q12

IIR適用年度前の移転価格課税について、対応的調整により適用年度後にその構成会社等の租税の額が減額された場合の「再計算国別国際最低課税額」の計算の可否

《照会の要旨》

当社(P社:3月決算)は、特定多国籍企業グループ等に属する最終親会社(UPE)です。

当社は、当社が100%出資するS国所在の国外関連者/構成会社等(S社:3月決算)との間で行った過去の国外関連取引(2022年3月期~2024年3月期:計3期)について、日本側での移転価格課税(増額更正処分)があり、S国の税務当局との間で相互協議が行われていましたが、今般、合意が成立しました(2025年3月)1。具体的には、P社の2022年3月期~2024年3月期の各期について+300の国外移転所得があるとして課税となったものが、S国の税務当局との相互協議により、これが各期100ずつ減額(300→2...