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[全文公開] アングル 全自動運転自動車

 税理士 川田 剛

( 68頁)

▶はじめに

先般米国出張で、カリフォルニア州のサンフランシスコ、サクラメントとアリゾナ州のフェニックスを訪問した。

フェニックスでは、連日40度以上(104℉)の猛暑に加え、緊急アラートで「砂あらし到来」とそれに続く20年ぶりの大雨に遭うなど、砂漠地域としてはめずらしい体験もした。

それだけではなく、今話題となっている無人の全自動運転自動車(ウェイモ)にも2回ほど乗る機会があった。

サンフランシスコでもその多さにビックリさせられたが、フェニックスでは実際にそれに乗るという体験をした。

そこで、今回は全自動運転自動車に関する話をしてみたい。

▶全自動運転自動車とは

「全自動運転自動車」とは、人間による操作や介入が一切不要な自動運転の車両を意味し、一般的にはレベル5のものをいうとされている。

ただし、筆者が乗車したのは、レベル5ではなくレベル4段階のものだった。

わが国ではまだ実験段階であるが、米国では、アリゾナ州などいくつかの州(5州)ですでに実用化されている。

筆者が実際に乗ったのは、グーグル系が運用しているウェイモ(Waymo)で、自動運転の無人タクシーだった。Waymoで用いられている車種は、全て高級車ジャガーで、料金はウーバーよりは若干高めに設定されているとのことであった。

しかし、長時間の運転でも人間の運転手のようにつかれることはなく、チップ等も不要であることから、同地では急速に普及してきているとのことであった。

ちなみに、フェニックスでは、1日目に現地の人と食事に出たが、そのときはホテルからレストランまで人間が運転するウーバーで向かった。

嵐と大雨のため交通がマヒしており、レストランの予約を1時間ほど延期してもらったが、そのような状況でも、Waymoの全自動運転自動車は普段どおり動いていた。

また、2日目には、Waymoでホテルからフェニックス・オープンが開催されたゴルフ場まで約1時間ほどを、さらに食事後にゴルフ場から空港まで、ほぼ同じくらいの時間を利用した。空港では指定された場所(ゲート前)に正確に停車した。

ちなみに、料金は、いずれも約25ドル(約4000円)ということだったので、予想していたよりもかなり安いという印象だった。

1回目は助手席に、2回目は後部座席にすわったが、どの席からでも車に指示をすることが可能だったし、好みに応じ音楽やニュース等も聞くことができるようになっていた。

今回の経験は、人手不足に悩むわが国にとっても資するところ大と思われるため、私的経験であるがあえて紹介することとした次第である。

▶税制との関連等

グーグルやテスラのような巨大企業とわが国の企業が単独で戦うのは、先方が数歩先をいっている状況からしてもかなり困難なのではないかと思われる (注)

(注)わが国でもレベル4の実証実験が福井県永平寺町で行われているようであるが、商業ベースまでは至っていない。

この分野における大幅な試験研究費助成や税制上の優遇措置等に加え、交通ルール等関連分野の大幅な改革が必要...、という印象を受けた旅であった。

国による支援が必要な場合、「Too late, too small」だった半導体産業の二の舞にならないことを祈りたいものである。

(参考)自動運転レベル

2020年12月の国交省資料によれば自動運転レベルは次の5段階に区分されている。

レベル

概要

運転操作の主体

レベル0

(運転自動化なし)

自動運転が何もない状態。

ドライバー

レベル1

(運転支援車)

システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う。

ドライバー

レベル2

(運転支援車)

システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う。

ドライバー

レベル3

条件付自動運転車

(限定領域)

決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。

システム

(システム非作動の場合はドライバー)

レベル4

自動運転車

(限定領域)

決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。

システム

レベル5

完全自動運転車

条件なく、全ての運転操作を自動化。

システム