[全文公開] アングル 米国のドラフト(選抜徴兵)制度
税理士 川田 剛
▶はじめに
先般、米国人の弁護士と会食していた際、同人から、日本の大学の医学部を卒業した息子(米国籍)が米国のドラフト(選抜徴兵)に応募したという話を聞いた。
その弁護士は、父親がマッカーサー司令部に勤務したことのある米国軍人で、母親が日本人という家庭でもあったので、その話を聞いたときもそれほど違和感はなかった。
▶ドラフト(draft)とは?
「ドラフト」といえば、わが国では、プロ野球のオーナー会議等で自分達が欲しい選手を指名する制度くらいしか頭に浮かんでこないというのが一般的なところであろう。
しかし、米国で「ドラフト」という言葉から受けるイメージは若干異なり、「徴兵」と受けとめられることの方が多いようである。
第二次大戦時には、米国でも、徴兵制が採用され適齢期にある多くの若者が戦場に送り込まれた。
そして、大戦終了後も、対ソ連への対抗策、なかでも西欧諸国の支援、朝鮮戦争の発生等もあり、「選抜」という形ではあるが、徴兵制は維持されていた。
ちなみに、米国で「徴兵制」が廃止されたのは、1973年1月にベトナム戦争が終了し、ベトナムとの間に和平協定が成立してからである。その後、1975年3月には、選抜徴兵登録制度自体も廃止された。
しかし、1980年7月に選抜徴兵法、いわゆるドラフト法の制定によって選抜徴兵登録制度が復活し、18才~25才のアメリカ国民の男性と永住外国人(グリーン・カード所有者)の男性に連邦選抜徴兵登録庁への徴兵登録が義務化された。
そして、登録義務があるにもかかわらず、その登録を怠った者に対しては、5年以上の禁固刑又は25万ドル以下の罰金が科されることとなっていた。そればかりではなく、連邦政府機関への就職が認められず、連邦政府からの奨学金も受けられないこととされていた。
ただ、実際には兵役終了後における大学進学への奨学金支給特典等に着目した、いわゆる志願兵の増加等により、ドラフトの登録をする者は実質的にほとんど消滅状態にある。
ちなみに、筆者の米国の友人のなかには、米国軍人として働き、その後、奨学金を得て大学に進学し、連邦政府の役人になったという者が少なからず存在していた。
なかでも海兵隊出身のA氏は、IRSの大幹部として大統領から最も優れた連邦政府職員として表彰されている。
▶あとがき
今回選抜徴兵登録をした者は医師ということもあるので、現地で実際に戦うことはないかもしれないが、本人は兵役についたらアジア地域での勤務を希望しているとのことである。
台湾、朝鮮半島など、東アジア地域の緊張が高まるなか、どちらかといえば平和ボケしているかもしれない当方にとって大事な問題を教えてくれたことから、あえて紹介することとした次第である。




