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租税条約届出書の実務と留意点

 税理士・公認会計士 荒井 優美子

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1.はじめに

我が国企業の海外展開の状況について、2024年版中小企業白書によれば、直接外国企業との取引を行う企業の割合(直接輸出企業割合)は大企業の約3割、中小企業 の2割に達し、大企業における割合は過去20年間、概ね一定しているが、中小企業における割合は増大している。直接投資企業割合は、大企業では3割超、中小企業では14%を超え、いずれも過去20年間増加の傾向にある(下記図表1参照)。

このように、国外との取引の増加や国外投資の増加は、国際税務の観点からは、利子配当等の金融所得や使用料の発生、株式や不動産その他資産の譲渡取引に係る所得が発生する場合に、取引の相手国の居住地により、国内法のみならず租税条約における取扱いに留意することが必要となる。日本との租税条約締約国の居住者(個人、法人)との取引で、内国法人がこれらの所得の支払者である場合に、当該居住者が租税条約の特典の適用を受けるためには、支払者である内国法人を通じて、その所轄税務署に租税条約に関する届出書(以下、「届出書」)の提出が必要である。内国法人がこれらの所得の受領者である場合に、租税条約の特典の適用を受けるためには、支払者で...