[全文公開] アングル トランプ関税を違憲とした連邦最高裁判決に対する反対意見
税理士 川田 剛
▶はじめに
以前この欄でも紹介したように (Vol.46 No.3) 、わが国のみならず世界に大きなインパクトを与えた「トランプ関税」であるが、連邦最高裁は2026年2月20日、「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠としてなされたトランプ大統領による関税賦課は、連邦憲法に違反するとの判決を下した。
周知のように、連邦最高裁判事9人のうち6人は、共和党の大統領によって任命されている。そのため、一部には、合憲判決が下されるのではないかという見方もあった。
しかし、フタをあけてみると、民主党系の判事3人のみでなく、共和党系とみられていた3人の判事も、今回の関税措置は違憲だとしている。
ただし、保守系の判事3人は、トランプ大統領によるIEEPAに基づく関税賦課措置を合憲だとしている。
そこで、今回は、本件関税賦課措置を合憲であるとした3人の判事の少数意見の要旨について紹介してみたい。
(注)ちなみに、多数意見は全体で50頁程度だったのに対し、反対意見はThomas判事が15頁、Kavanaugh判事(Thomas判事、Alito判事同調)のそれは63頁にのぼっている。
▶Kavanaugh判事の反対意見 (Thomas判事、Alito判事同調)
本件で問題となっているIEEPAに基づく関税賦課の可否については、そもそも連邦裁判所で判断すべき事項ではない。
それは、同法制定の歴史及び過去における裁判例等からみても明らかである。
例えば、米国連邦議会は、1962年通商拡大法や1974年の通商法で、外国産品の米国への流入を規制する目的で輸入関税を課してきた。しかし、それらの措置について憲法上問題となったことはなかった。また、たとえ問題になったとしても、合憲性が認められている。
また、1971年にNixon大統領が導入した、「対敵通商法(Trading with the Enemy Act)」に基づく10%の輸入関税や、1976年のFord大統領による「原油輸入に対する調整賦課金(adjust the imported)」についても、合憲性が認められている(Federal Energy administration v. Algonquin SNG Inc.426 U.S. 548.(1976))。
多数意見では、IEEPAが、大統領に包括的な輸入品に対する賦課金(duties)を課する権利を認めていないとしているが、国の安全保障に関する事項は、連邦議会が大統領に付与した権限の一部であるということは、当裁判所も認めてきたところである(Zeurel v. Rasie. 381. U.S.1.17(1965))。
この点については、多数意見に同意しているJackson判事も認めているところである。
私が強調したいのは、「全ての分野について大統領に権限を委任すべし」といっているのではなく、複雑な外交関係事項等につき、「一時的な措置として大統領に関税賦課という権限を委任する」ということであれば(“Only”the deal with an unusual and extra-thueab)、憲法上、問題はないということである。
▶Thomas判事の反対意見
私も、Kavanaugh判事が反対意見のなかで述べている内容、すなわち、「当裁判所の多数意見(IEEPAに基づく関税賦課は違憲であるとする意見)は、「法解釈上からも認められない」とする見解に賛成である。これまでも、連邦議会が必要と認めるときは、大統領に対し、「輸入を規制する権限」を付与してきた(authorized the President, to regulate … unportation)。
そして、そこでいう「輸入規制」には、輸入品に、賦課金を課す権限が含まれていると解されてきた(understood to include the authoritigs to impose duliess on imports)。
たしかに、連邦憲法では、「三権分立(separation of powers)」という基本原則に関する規定はある。しかし、そこで禁じられているのは、「権限」の中核部分(core)のみであり、全ての分野について「(大統領に)委任してはならない(non delegation)」ということではない。
実際、多くの分野で、大統領への権限移譲がなされてきていた(has done to repeatedly)。
そもそも、外国産品に対する関税等の賦課権限は、連邦議会による大統領への権限委任(delegation)事項であり、当裁判所も、それを認めてきた(Dept of Transportation v. American Railroacl, 578, u.s. 43, 80-81, No.5,(2015))。




