[全文公開] 書評 山崎 昇・橋本秀法・原 武彦 共著 『実務に活かす 最新 国際課税の重要判決』(2026年5月/日本法令)
早稲田大学大学院会計研究科 教授 本田 光宏
国際課税の最前線での執行、税理士としての実務及び大学院での教育実績など、国際課税について、幅広くかつ豊富な経験を有する3名の共著による本格的な国際課税のケースブックが公刊された。
「本格的」との形容詞を付したのは、本書は、単に国際課税に関する最近の裁判例を集めたものではなく、次のような工夫がなされているためである。
まず、構成面であるが、第1部を「総論」と位置付けて、最近の国際課税の争訟をめぐる動向を分析した上で、本書で取り上げる裁判例や今後の展望について考察を加えている。近年の国際課税分野は、OECDなどでの国際課税の議論や、それに伴う税制改正や通達改正などが目まぐるしく展開しており、本書は、このような動きの中での裁判例の動向を鳥瞰することを可能としている。
また、内容面においても、近年の国際課税分野での代表的な裁判例35事例を所収しており(第2部)、充実したケースブックとなっている。近年注目を集めている移転価格税制について9事例、外国子会社合算税制について8事例となっているほか、源泉国際課税4事例、個人の国際課税4事例、租税条約2事例も取り上げており、租税法分野の中でも専門性が特に高い国際課税の各分野を網羅する内容となっている。
そして、各裁判例について、実務上の観点からの解説も加えて実務的な有用性を高めているとともに、判例評釈や関連する主要な論考なども参照されて脚注で表記されている。そのため、本書は、国際課税の実務面だけでなく、判例研究の面においても広く参照されるものと思われる。
国際課税分野は、OECDモデル租税条約とそのコメンタリーや、OECD移転価格ガイドラインなどの国際的なルールの中で形成されてきており、裁判も単に国内法令の解釈だけでなく、国際課税ルールに沿った解釈が求められるという独特の性格を有している。近年の国際課税をめぐる裁判例の中には、このような国際課税ルールに照らすと疑問符が付くものも見られるため、本書の今後の国際課税の判例研究への貢献に大いに期待したいと考えている。
大学院での国際課税法の授業を担当する評者としては、ケースブックとして、受講生に推薦する一冊である。
(評者:早稲田大学大学院会計研究科教授 本田 光宏)




