仕訳で理解するリサイクリング(入門編) 第6回 退職給付会計とリサイクリング②

中央大学専門職大学院 国際会計研究科 特任教授 小澤 元秀
 公認会計士 樋口 哲朗

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Ⅰ.はじめに

前回は改訂された新退職給付会計基準について,未認識項目(数理計算上の差異及び過去勤務費用)の会計処理についての改訂内容とリサイクリングの概要を説明しました。今回は,退職給付会計におけるリサイクリングの会計処理を,設例を用いて仕訳で具体的に理解したいと思います。

Ⅱ.設例による理解

退職給付会計におけるリサイクリングの会計処理を理解するためには,まず退職給付会計の基本的な計算構造を理解することが必要ですので,適用指針の設例を参考に理解を確認したいと思います。

【設例】

前提条件

1.A社は,従業員非拠出の確定給付企業年金制度を採用している。

2.A社は,数理計算上の差異の費用処理については当期の発生額を翌期から費用処理期間10年の定率法(0.206)で費用処理する方法を採用している。

3.数理計算の仮定(X1年度X2年度とも):割引率は5.0%,長期期待運用収益率は5.0%

4.X1年4月1日における数理計算の結果,X1年4月1日からX2年3月31日までの勤務費用,利息費用及び期待運用収益はそれぞれ700,500,350と計算された。

5.年金資産からの年金給付支払額及び掛金拠出額は,それぞれ...