欧州で始まる監査事務所の強制交代制

日本企業への影響は?
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企業で会計問題が生じるたびに検討と先送りを繰り返してきたのが「監査事務所のローテーション制度(交代制)」の導入だ。これは,従来の監査責任者の定期的な交代ではなく,事務所(監査法人)そのものの交代を意味するため,実現すると企業や監査人への影響は大きい。わが国でも関係者が注意してきた大きな動きだが,昨年4月,欧州がその制度化に踏み切った。適用は2016年6月からであり,この1年は欧州域内の国々が実施に向けて詳細を調整する期間になる。一方,米国では監査事務所のローテーション制を導入しないため,世界の2大市場で異なる制度の中身や企業への影響などが気になるところ。それぞれ現状を確認しておきたい。

●監査事務所の強制交代制度

欧州で新たに制定された監査事務所の継続監査期間は最大10年である。来年6月からEU域内でこれが適用されると,域内各国の上場企業等では,法定監査を手掛ける監査事務所が最大10年ごとに交代することになる(10年より短い期間での交代制も可)。ただ,この期間には,EU加盟国に次の選択肢が認められている。

①期間終了後,入札を行って同じ監査事務所が選定された場合は,一回に限りこれを認める(同...