ハーフタイム 米国で所得格差が拡大したわけ

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典型的なアメリカ人と呼ばれてきたB・フランクリン(1706~1790)は自伝でこう述懐している。「節制,節約,倹約,勤勉といった13の徳目に関して犯した過失がなかったかどうか,毎日反省した。若くして窮乏を免れ財産を作り様々な知識を得て有用な市民となったのは勤勉と倹約のおかげである。」ドイツの社会学者M・ウェーバーは,彼の享楽を斥けてひたむきに貨幣を獲得する努力,自己目的としての営利活動,現世的職業倫理を「近代資本主義の精神」と呼んだ。ここまで読めば,18世紀のアメリカは,禁欲的な生活信条をもち"時は金なり"と信じて勤倹努力すれば誰でも豊かになれる社会だった,少なくとも"機会の平等"があった,と思うであろう。だがウェーバーは同時にこう指摘している。「この禁欲は心理的効果として財の獲得を伝統主義的倫理の障害から解き放った。利潤の追求を合法化し,それをまさしく神の意志に沿うものと考えて伝統主義の桎梏を破砕してしまった。」欧州の伝統主義では自由とともに平等も大事にする。豊かになる人と貧しい人の平等を守るのが伝統である。だが欧州から移入された"自由"は大事にするが,"平等"は軽視する傾向がすでに...