証券取引等監視委員会 佐々木清隆事務局長にきく「証券取引等監視委員会の取組みと今後の活動」

聞き手:西川 郁夫氏(慶応義塾大学教授)
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証券取引等監視委員会 事務局長 佐々木清隆

はじめに

西川氏 本日は,証券取引等監視委員会(SESC)の佐々木清隆事務局長にお話を伺います。証券取引等監視委員会(以下「監視委員会」)は,証券市場全般を監視する役割を担っており,活動内容は多岐にわたります。必ずしも私たちはその活動内容を深く理解していないこともあり,本日の局長のお話を興味深く伺えると思います。特に本誌の読者は,有価証券報告書等の開示書類の作成に携わっている方が多いことから,「開示検査」に関する取組みなどを中心にお話しを伺いたいと思います。

市場監視にはフォワード・ルッキング・アプローチの強化を

西川氏 まず,長く金融行政に関わられてきて,現在の金融証券市場をどのようにご覧になっていますか。また,そのような市場の現状を踏まえて,市場監視の在り方についてのお考えをお聞かせください。

佐々木氏 証券市場に限らず,金融市場全般で見た場合にいま言えるのは,1つはグローバル化ということです。日本のマーケットの動きは,日本だけではなく当然海外のマーケットにも影響されています。直近であればBrexit(英国のEU離脱)もそうですし,ここ数年の新興国,中国,アメリカなどの経済の影響も受けています。日本の証券市場の投資家の5割,6割が海外の機関投資家になっています。

2つ目が,IT化です。これも証券市場に限定されず金融全般ですけれど,特に証券市場の場合には,10年以上前から高速スピード取引のHFTであったり,最近ですとヘッジファンドがよく使っているアルゴリズム取引,それからいま,FinTech(フィンテック)という名の下でITの応用がどんどん進んでいます。これがさらに進むというのが2つ目です。

3つ目は,いま言ったこととも関係しますが,金融市場での取引,証券市場での問題が複雑化していることです。大きく言うと,この3点が最近の市場の特徴かと思います。

その市場に対して,我々はどう監視して行くかということですが,いま申しあげた3つの点に対応していくためには,我々の仕事はどうしてもバックワード・ルッキングな事後チェックの仕事が多いわけですけれども,グローバル化にしろIT化にしろ変化のスピードが速いので,まずは,先を読んで対応するフォワード・ルッキングなアプローチを強化することです。

2つ目は,我々の仕事というのは開示の問題にしても,インサイダー取引にし...