ハーフタイム IFRS採用でのれん償却負担がなくなる?

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IFRS採用を決定する企業について,のれんの償却費がいくら無くなり,営業利益を押し上げると業績予想するのがメディア報道のパターンになっている。まるでIFRS採用の動機がのれんの非償却処理にあるようだ。日本企業が海外企業を買収するケースでは,被買収企業は製造業よりもサービス業が多く,物的資産が少ない企業を買収すると,対価の大部分がのれんとなる。しかも買収企業も通信サービス業であれば,連結総資産に占めるのれんの比率は数十%に達する。そのようなM&Aでは,のれんを償却する・しないのインパクトは非常に大きくなり,のれんの非償却が,あたかもIFRS採用の大きな動機であるかのように見られても無理からぬところがある。日本基準ではのれんは定期償却が義務付けられているが,IFRSではのれんの償却は禁止されている。だが単純な思い込みほど怖いものはない。

第1に,のれんは超過収益力とかシナジー効果とか言われるが,その資産価値は組織と人によって支えられ,事業環境の変化やグローバル競争で急激に消滅する。有効期間や減価パターンは予測することも困難である。だからこそIFRSは定期償却を禁止し,所定の減損テストを励行す...