会計上の見積り 実務上の留意点Q&A 第4回 引当金

新日本有限責任監査法人 公認会計士 笹澤 誠一

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1. はじめに

引当金は,適正な期間損益計算を目的として,将来発生が見込まれる費用又は損失を当期の損益に計上する際に,その相手勘定として負債又は資産(評価勘定)として計上される勘定科目です。企業会計原則注解注18により,①将来の特定の費用又は損失であって,②その発生の原因が当期以前の事象に起因し,③発生の可能性が高く,かつ,④その金額を合理的に見積ることができる場合に,当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ,当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載します。

会計基準等で取扱いが定められているものは一部にとどまり,引当金全般にわたる定めは上記の4要件のみです。4要件を満たす場合は原則として引当金計上が必要なため,実務では多様な種類の引当金が存在します。また,4要件には見積りの要素が含まれるため,慎重な検討が必要です。

なお,文中の意見に係る部分は筆者の私見であることを予め申し添えさせて頂きます。

2. 引当金の見積りの要素

Q 引当金を計上するときに留意すべき見積りの要素について教えて下さい。

A 主に検討が必要となるのは,引当金の要件のうち発生可能性の高さ...