ハーフタイム 自分の中の他人

~意識的対応vs. 無意識的対応~
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われわれは,様々な情報に反応しながら生きている。慣れた日常生活では無意識に対応するが,住宅を買うとか重い病気に罹れば意識的に対応する。会社生活では常に意識的対応が求められるが,同じ仕事を数年続けているとマンネリに陥り,新しい情報に接しても無意識的に対応している自分に驚くことがある。

無意識に対応しても期待通りの結果になれば良いが,意識的に対応していればあり得ない失敗を招くこともある。このような結果を招いたのは誰だと辺りを見回し,犯人は自分以外にいないことを発見すると愕然とする。これが無意識裡に行う判断と行動のコワイところである。

このような現象を,アメリカの心理学者,T・ウィルソンは『自分の中の他人』(原題:Strangers to Ourselves)と呼ぶ。ここでいう"他人"とは,無意識的対応のことであるが,社会的生き物である人間は,周囲から様々な影響を受けているから単なる比喩ではない。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは「汝自身を知れ」という格言を残し,モンテーニュも「世界で最大のことは自分自身を知ることである」と言った。

たしかに自分の意思決定と行動に責任をもつにはまず自分を知るべきであ...