ハーフタイム 公正価値測定で頼れるのは"企業"か"市場"か

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「組織の目的は,多くの決定が,実際に成果をあげるためには多数の個人の参加が必要であり,その事実を十分に活かそうとするところにある。したがって組織とは,(市場による)価格システムがうまく働かないときに,集団的行動の利点を実現する手段なのである」(ケネス・J・アロー『組織の限界』第2章)。

このやや抽象的だが正鵠を射た指摘は,同一支配下にある企業グループの経営と会計のあり方を考える貴重な手がかりになる。

まず経営者が判断するのは,"企業内取引か,市場取引か"である。モノ・サービス企業にあっては,いずれが合理的価格で安定した取引ができるかによって内部取引と外部取引に分かれる。優れた車体の外部調達先であったFisher Body社を内部化し安定的な仕入れ先に変えたGMの話や,製品の海外販売先をジョイント・ベンチャーや子会社に変えることによって販売数量と売上高を伸ばしてきたわが国の輸出企業は,まさに「価格システムをうまくコントロールし,集団的行動の利点を実現する手段」とした好例と言える。

では取引の内部化が,なぜ市場による価格システムの欠陥を補うことになるのだろうか。この疑問を解く鍵は"契約コスト"に...