IFRSをめぐる動向 第120回《特別編》 2019年の主な基準開発の動向と今後の予定

解説

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 吉岡 亨

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 林 千雄

( 20頁)

Ⅰ はじめに

昨年2019年も,国際財務報告基準(IFRS)について,新基準の開発や基準の適用支援の活動などさまざまな動きのある年でした。

大型の基準として開発された金融商品(IFRS第9号),収益(IFRS第15号),リース(IFRS第16号),保険契約(IFRS第17号)について,最初の2つは一昨年,リースは昨年から適用が開始されています。昨年はこれらの基準の適用に伴う実務上の課題がIFRS解釈指針委員会に多く寄せられ検討されました。また,保険契約については適用前から各種の課題が寄せられており,国際会計基準審議会(IASB)の審議を経て6月にIFRS第17号の一部修正案(公開草案)が公表されています。

多くの関心が寄せられているのれんと減損のトピックについても活発に議論が行われ,6月には今後の公表物に盛り込むIASBの一連の予備的な見解が決定されました。また,金融市場で進められている金利指標改革に合わせ,金利指標の置換えによるIFRS財務諸表への影響の不確実性に対処するため...