企業内容開示制度の実効性確保に向けて 第6回 公認会計士等の記述情報に対する保証への取組と課題

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 結城秀彦

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1.「コネクティビティ」「アカウンタビリティ」「ガバナンス」‐年次報告書における記述情報の開示への関心

これまでの各回の連載における企業の年次報告書を巡る議論からは,年次報告書の利用者が,企業の戦略やリスク認識といった記述情報①とこれに対する過去の実績情報を結合し一体として理解することにより,将来に向けた価値の創出のストーリーを読み取り,その経済的意思決定に資するように年次報告書を利用するという思考が強まっているように思われる。伝統的に,年次報告書は過去の特定の年度の財務に係る実績情報を報告し,株主から受託した財産の状況に関する説明責任を果たすために作成されるものとして位置づけられていた。しかしながら,財産の運用の委託を継続するかどうか検討中の株主や,新規投資を行うかどうか検討中の投資家(潜在投資家)が将来に向けて意思決定を行うためには,過去の実績情報を報告するのみでは情報として不足しているものと思われる。将来の意思決定のために株主や潜在投資家が過去の実績情報を有効に利用するためには,企業の過去の実績を企業の中期的な戦略やリスク認識の枠組みの中に位置づけ,企業がどのような戦略や管理指標(...