ハーフタイム 企業倫理とは何か

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企業はいま,「株主利益至上主義と短期利益」から「あらゆるステーク・ホルダー重視と持続可能性」へ存在理由と事業目的を転換しつつある。その持続可能性の支柱となるのは事業環境の変化への対応力と企業倫理であるが,企業倫理とは何かとなると,確たる定義もなければ,その正体は掴みどころがない。フランスの哲学者アンドレ・コント=スポンヴィルに至っては「資本主義に徳はない」,「企業倫理はひとつの流行に過ぎない」,「あるのは個人の倫理に過ぎない」と断定している(『資本主義に徳はあるか』紀伊國屋書店・2006)。

たしかに資本主義は一つの経済システムに過ぎず,企業も法律が設定した制度に過ぎない。公開企業であっても実体は創業者の個人企業に過ぎないとか,創業者の倫理的理念に基づいてアイデンティティーを保っている企業も少なくない。いずれにせよ法的組織自体がもつ倫理というよりも,人的組織を構成する役員・従業員個人がもつ倫理のほうが重要であることに誰しも異論はない。しかし,数々の企業不祥事を想い出すと,倫理をもつのは"企業か個人か"で話が片付くほど現実は単純ではない。個人の倫理問題とみなして,組織から完全に切り離すだけ...