ハーフタイム 「将来予測」を必要とする会計

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わが国の会計体系は,企業会計原則を筆頭とする「取得原価主義」と理解されてきた。だが国際化の流れに沿って,とくに1990年代後半の会計ビッグバン以降,市場リスクに晒されている金融商品には時価が,退職給付債務の見積りには将来予測も必要となった。

IFRSではさらに,棚卸資産や固定資産の取得原価には購入価格と稼働場所への輸送費だけでなく,将来の「解体及び除去並びに敷地の原状回復のコスト」のうち,それに係る義務が取得時に発生するものを,構成要素に加えるよう求めている(IAS16-16-c)。その場合,最善の見積りによる引当金設定が必要となる場合もある(IAS37-36~41)。

資産・負債の認識対象がこのように拡張されてきたのは,会計情報の透明性の向上だけではない。放射線やアスベストなどの有害物を含む物件がそのまま放置されれば,人体に被害を及ぼし,資産の再利用を妨げるからだ。いまさら上記に関する具体例をいちいち挙げることは省略するが,ここで注目すべきは,会計に期待される機能は,単に投資家の意思決定に必要な「財務情報の有用性」だけではない。国民の生命と財産を守ることも含まれるということである。IAS...