ハーフタイム 合理性と効率性は手段であって目的ではない

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合理性は近代資本主義を支える土台であり,効率性は限りある資源や財を無駄なく配分する尺度である。顧客に経済的便益をもたらし,社会に安心・安全を届けることを目的とする企業にあっては,合理性と効率性は目的を達成するための手段にすぎないはずだが,最近起こった取締役会の機能不全,製品検査の偽装や不正報告は,手段を目的と取り違えた結果ではないか。そのような不祥事を防ぐには,以下のような意識改革が必要であろう。

第1に,経営者が上意下達で方針を決定する組織にあっては,社外の専門家から成る第三者委員会の調査結果に頼る前に,経営者はまずは社内中間管理職グループの意見を聞く場を設けるべきだ。そうは言っても,タテ社会の性格が強いわが国では,上下の支配関係に左右され易い。他方,普段は長幼の序を重んじる中国人も,中国人同様に敬老精神の強いインド人も,何か重要な決定を要する相談事となると,目上の人に対しても一応堂々と自分の意見を披露,あるいは反論できる(中根千枝『タテ社会の人間関係』講談社現代新書)。

第2に,終身雇用が人事の主流だったわが国企業では,社員の連帯性と企業とのアイデンティティーは世界に類がないほど強く,...