<INTERVIEW>中小監査事務所への期待③ 應和監査法人「人材開発とIT投資で使命を果たす」

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應和監査法人 総括代表社員 澤田 昌輝

中小監査事務所の監査品質向上に向けた取組みを聞くインタビューシリーズ。今回登場するのは應和監査法人。今般の公認会計士法改正前から進めてきた体制整備の内容、そして人材教育・IT投資を重視する背景は何か。これまでの自主的な取組みと共に、法人経営で特に意識していることを澤田昌輝総括代表社員に聞いた。

1.法改正前から準備進める

―公認会計士法改正をどのように受け止めましたか。

従前から日本公認会計士協会による上場会社監査事務所登録制度が運用され、各監査法人に適切な業務管理体制の整備が求められていましたが、法改正により「『監査法人のガバナンス・コード』に基づく組織運営」と「情報開示の充実」を想定した制度になるものと理解しています。弊法人の規模だと、たとえ法令で要求されなくても自主的に取り組む必要があると感じていたので、昨年末から準備を進めてきました。

―どのような準備を進めてきたのでしょうか。

近年は職員や被監査会社の数が増えてきたため、組織的な運営をもう一段階レベルアップさせる必要があると感じていました。そのため、常勤会計士の増員に加えて会計士以外の幅広いバックグラウンドを有する人材の採用等、組織的な運営に必要となるリソースの拡充やICT基盤の整備にも注力してきました。社員会の運営についても外部の専門家からモニタリング、助言してもらうことを検討しているほか、先行して「監査品質に関する報告書」を作成していた大手、準大手監査法人の事例等を分析して弊法人の情報開示すべき項目を整理し、報告書の作成に着手し始めていたところでした。

―貴法人は監査法人のガバナンス・コードを適用していませんね。

コードの5つの原則のうち、3つ目と5つ目の原則はそのまま適用していませんが、その代わりにコードの内容に沿った具体的な施策を公表してきました。例えば3つ目の原則①は外部からの経営監視を求めています。弊法人には社員会という意思決定機関があり、互いの顔を見ながらモニタリングできている中、社外役員を確保するコストを考えると、弁護士さんと顧問契約を結んで適宜相談する体制で問題ないと考えてきました。5つ目の原則「透明性の確保」②についても、規模を考えれば被監査会社に説明できれば十分であり、「業務及び財産の状況に関する説明書類」③などで対応できていると思います。コードの趣旨を踏まえた...