会計知識録 第26回 いま注目される「運転資本」の意味と役割

 公認会計士 溝口 聖規

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運転資本とは、日々の事業運営に必要な資金のことです。資金繰りにも直結するため、運転資本の管理は事業の継続において非常に重要です。

最近では、運転資本はROE、ROICなどの財務指標の改善や企業価値の向上においても重視されていますが、一方で、ビジネスパーソンの間でもしっかりとした理解が得られていない印象を受けます。今回は、運転資本の企業経営における意味と役割について、事例を用いて説明したいと思います。

運転資本とは

運転資本はワーキングキャピタル(WC)とも言われ、一般に次の計算式で表されます。

運転資本(WC)=売上債権+棚卸資産-仕入債務

(注)売上債権は受取手形・売掛金、棚卸資産は原材料・仕掛品・半製品・製品・商品・貯蔵品、仕入債務は支払手形・買掛金です。

【図表1】運転資本

運転資本は、売上債権と棚卸資産が増加、または仕入債務が減少すると増加します。逆に、売上債権と棚卸資産が減少、または仕入債務が増加すると減少します。図表1を貸借対照表に例えると、運転資本は借入金と見ることができます。つまり、運転資本が増加すると借入金を増加させる必要が生じます。

運転資本はどんな場合に増加するのか?

運転資本が増...