会計不正への対応 その1 企業経営、利益予算の達成か?コンプライアンスか?

 公認会計士・公認不正検査士 安福 健也

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1.はじめに

我が国企業の会計不正が後を絶たない。

当連載では、会計不正が発覚した会社の「改善報告書」や「改善状況報告書」を基に6回にわたって会計不正事例を紹介していく。

ここで「改善報告書」とは、有価証券上場規程(東京証券取引所)により、上場会社が適時適切な会社情報の開示等に違反し、東京証券取引所が、改善の必要性が高いと認めた場合に、当該上場会社に対し、開示等の経緯や改善措置について提出を求める報告書をいう。

また、「改善状況報告書」とは、「改善報告書」を提出した上場会社が、以後の改善措置の実施状況や運用状況について、東京証券取引所に提出を求められる報告書をいう。

会計不正事例の紹介を、「改善報告書」や「改善状況報告書」を基に行う理由は、事後の改善措置をみることで、会計不正発生の根本原因を明らかにすることができるためである。

当連載は、各事例から、会計不正の根本原因や背景を考察し、さらには事後の主要な改善状況を確認することで、今後の我が国企業による会計不正の防止または早期発見に資する「転ばぬ先の杖」たらんとする試みである。

初回となる今回は、会社が利益を過度に追求するあまり、コンプライアンスが軽視...