Q&Aコーナー 気になる論点(352) 資本の特徴を有する金融商品(1)

‐IAS第32号改正案の概要‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は、2023年11月29日に公開草案「資本の特徴を有する金融商品(FICE)‐IAS第32号、IFRS第7号、IAS第1号の改正案」(改正案)を公表しています(コメント期限:2024年3月29日)。これは、金融負債の要件について、IASBが2018年3月に改正した「財務報告に関する概念フレームワーク」(概念フレームワーク)における負債の定義との相違の解消を提案しているのでしょうか。

いいえ。改正案では、現状と同様に、その企業の経済的資源ではない自社の持分金融商品により決済される金融商品を金融負債に分類することを提案しているため、経済的資源を移転する現在の義務を負債としている概念フレームワークとの相違は解消しません。

〈解説〉

背景

IAS第32号「金融商品:表示」では、企業が発行した金融商品を金融負債又は持分金融商品として分類及び表示するための要件を定めています

概念フレームワークでは、負債と資本という2区分(binary distinction)を継続することとしています。ただし、IASBは、2014年に、FICEプロジェクトとして、負債を資本から区別す...