会計知識録 第38回 Non-GAAP指標は本当に有用なのか?
公認会計士 溝口 聖規
はじめに
本田技研工業(ホンダ)は2024年から、財務管理の新たな指標として、「研究開発費を使用前の営業キャッシュ・フロー(R&D調整後営業CF)」を導入すると発表しました。R&D調整後営業CFとは、金融事業を除く事業から得た営業CFに、資産計上した分(開発資産への振替額)を除いたR&Dを足し戻したものとしています。
自動車業界はいかに電気自動車(EV)で利益を出すかの課題に直面していますが、新たなソフトウエアや試作車の開発、内部の機構や制御系統の実験などにかかるR&Dや、生産体制の増強にかかる費用が先行して発生します。企業が投資として行うR&Dコストは、営業キャッシュ・フローから既に控除されています。ホンダは、事業変革期において、将来成長への資源投入と株主還元のバランスを取りながらキャッシュを持続的に創出するためには、EV開発、ソフトへの投資、そして株主還元の原資となるキャッシュを把握して、予算設定や進捗管理を緻密に行うことが重要と考え、当該指標の開示を始めたようです。
ホンダのR&D調整後営業CFのように、会計原則に基づかない利益や財務数値をNon-GAAP指標といいます。ホンダに限らず...
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