「リースと収益認識と概念的枠組みの関係」シリーズNo.5 新概念によるリース会計と収益認識の課題

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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1.見積りと不確実性

これまでリース会計改訂案と新収益認識基準の会計手法を検討し,その過程で気づいた問題点は各章で指摘してきた。しかしながら,新会計に共通する問題点乃至課題を総括すると,以下の2つの批判からも判るように,最大の問題点は資産負債の見積り(IFRSは見積りを公正価値の測定という)とそれに絡む「不確実性」に集約されるように思われる。この点をズバリ指摘したのは次の2つである。

(1)米国AAAの財務会計基準委員会は,その紀要(2011)で,「実現・実現可能・稼得過程」による既存の収益認識基準は漠然としており,IASB/FASBは2002年以来それを改めようとしてきたが,彼らの公開草案(2010)による「履行義務とその充足」という概念は相変わらず漠然としている,と批判し,次のように改訂すべきであると訴えた。①具体的で理解し易い言葉を使用すること,②収益認識時点は,モノの引渡しや役務の提供時ではなく「顧客による代金支払い」時とする。③公正価値を止め,歴史的原価に回帰すれば収益認識に伴う不確実性は消える。

提案①はごもっともだが,②以下はどうもおかしい。中小・非公開企業間取引が個人顧客を対...