「リースと収益認識と概念的枠組みの関係」シリーズNo.7 収益認識規準IFRS15号が経営と会計実務に与える影響

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

IASB/FASBの合作であるIFRS15号は投資家に有益な情報を提供することを主目的とするが,このシリーズでもすでに見てきたように,企業経営と会計実務に対しても多大の影響を与えると思われる。原則主義の精神を正しく理解して適用すればガバナンスと内部統制を向上させるテコとなる一方,恣意的判断による利益操作の余地を広げる可能性もある。いままで統一的な収益認識規準がなかったのは,業界や企業ごとにビジネスモデルが異なるからとされてきた。いまでも数個の原則だけで多様な会計実務を束ねることは無理だという意見がくすぶっている。それだけに収益認識はいままでも,そしてこれからも利益操作の対象になり易い。以下の前半1~3項ではわが国企業で起こり易い諸例について,後半4~5項では米国の企業不祥事にIFRS15号を適用するときの影響を考察する。

1.顧客契約重視による架空・前倒し計上の防止

顧客とは,「企業(entity)からモノまたはサービスを対価との交換によって取得するために,企業と契約する相手方である」(IFRS15号の用語定義集より)。簡単な定義だが,企業の内部者である連結対象の子会社・関連会社は...