「リースと収益認識と概念的枠組みの関係」シリーズNo.8(最終回) IFRS15号による収益認識と税務

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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1.はじめに

IFRSを任意適用する日本企業数は年内にも100社を超えようとしている。しかも主要企業を中心にIFRSが普及すると,“IFRSは法人税法22条4項でいう一般に公正妥当といえる企業会計の慣行といえるか”という基準性に関する従来の議論は意味を失うであろう。

その場合,IFRSによる会計利益と課税所得を如何に接近させるかが新たな課題となる。そうはいっても,税法は公平な課税を目指す国内ルールであり,IFRSは投資家向けに企業の財務情報を提供する国際ルールであるから,両者の計算原理や計算方法を接近させるといっても,税務がIFRSに歩み寄って折合を付けるほかないと思われる。

以下では,まず2005年からIFRSを採用しているイタリアの事例を参考までにレビューする。次いでわが国税法の課税所得計算とIFRSの利益計算の構造を比較し,最後にこれからの収益認識における問題点と企業の対応のあり方を考えてみたい。

2.イタリアにおける会社法・税法改革

EUのIFRS移行論議では,税法をIFRS寄りにした英国と,商法会計をIFRS寄りに現代化したドイツは話題を集める一方,イタリアはほとんど注目されてこなかっ...