Q&Aコーナー 気になる論点(142) IASB概念フレームワークの公開草案(8)

―負債の認識―

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」では,負債の定義や認識規準を変更する提案をし,それは,IAS第37号「引当金,偶発負債及び偶発資産」の内容と異なるため,IAS第37号は改正されるのでしょうか。

EDでは,現行のIASB概念フレームワークから負債の定義のうち,「現在の義務」の意味するところについて,企業が経済的資源の移転を回避する実際上の能力を有していないとすることを提案しています。これに対し,IFRIC第21号「賦課金」で解釈されているようにIAS第37号では,現在の義務が存在するためには,企業が将来の移転を回避する能力を,たとえ理論上でも有していてはならないとしています。

このため,これらの間には不整合がありますが,概念フレームワークは個々のIFRSや解釈指針に優先するものではなく,また,個々のIFRSを修正するには,通常のデュー・プロセスを経る必要があります。したがって,EDでは,概念フレームワークが改訂されたとしても,必ずしもIAS第37号の変更につながるわけではないとしています。

<解説>

負債の定義...