金融会計の論点シリーズNo.12 為替リスクのマネジメント

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

前回のシリーズNo.11「外貨換算リスクのマネジメント」( No.3249 )では,為替予約等(通貨先物,通貨オプション,通貨スワップを含む)による為替リスクのヘッジ会計は扱わなかった。表示上の換算(translation)と外貨・円貨の為替(exchange)は絡み合っているが,本来は別々の操作であり,同時に扱うと論点が不明確になり易いからだ。今回は日本基準を中心として先物為替相場の予約(先渡し契約)によるヘッジ会計を集中的に検討する。ただ,為替予約等のデリバティブに依存する前に,シリーズNo.7( No.3238 )で述べたヘッジ活動が先行しなければ有効なリスクヘッジにならない。ポイントを繰り返すと,Long/Shortポジションの把握に慎重を期し,合理的なリスクマネジメント方針を策定することである。例えば,

①原材料等の輸入から生まれる外貨債務と製品輸出等から生まれる外貨債権を相殺する。

②海外ファイナンスセンターでは複数の外国通貨取引から生まれるリスクエクスポジャーは多通貨会計によってnetリスクエクスポジャーを絞り込む。

③事業計画段階から正確かつ柔軟にヘッジ対象を予測しヘッジ方針...