ハーフタイム マイナス金利は割引率にどう影響するか

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割引率の低下は,退職給付債務を膨らませるなど,決算予想を狂わす一因になっている。

割引率は,利子率と同じ意味に使われることが多いが,将来キャッシュフローを割引いて現在価値を算出するときに使われる割引率は,ケインズ経済学でいう「資本の限界効率」であり,その変動は「流動性選好」(利子は現金を手放す流動性や債券保有のリスクの対価とみる)とも密接に関係する。企業会計における割引率は,退職給付債務に限らず,次のような場面にも影響する。いずれにせよ,割引率の低下によって,資産負債の割引現在価値(DPV)は大きくなる。しかも,割引期間が長くなればなるほど,将来キャッシュフローの予測が狂い,割引率の妥当性も低下することは,ある程度避けがたいであろう。

1)割引率が最も日常的に使われるのは銀行による手形割引だ。商業手形(輸出取立手形を含む)の割引によって,商品の売り手は売った商品の代金を,手形期日を待つことなく割引日に受け取れる「実質ファイナンス」である。その割引率は短期利子率で決まる。

2)手形割引の割引率は短期市場利子率で決まるが,投資家が債券の価格を決める割引率は,発行時に約束すれば以後変えられない表面...