IFRSをめぐる動向 第99回 マクロヘッジ再び

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 宮治 哲司

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。

今回は,2017年3月から同年6月のIASB会議で議論された動的リスク管理(マクロヘッジ)の会計処理に関する議論について取り上げます。動的リスク管理に関する議論は,2014年4月に公表されたディスカッション・ペーパー「動的リスク管理の会計処理:マクロヘッジに対するポートフォリオ再評価アプローチ」に対するフィードバックを受け,プロジェクトの方向性を議論した2015年7月のIASB会議以来,久々のテーマアップ(教育セッション)となりました。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.動的リスク管理(マクロヘッジ)に関する検討が行われる背景

(1)動的リスク管理(マクロヘッジ)とは何か

動的リスク管理は,一般に,マクロヘッジと呼ばれることもあります。しかし,「マクロヘッジ」は,例えば,個別ヘッジに対応する概念を意味することや,資産と負債のネット・ポジションをヘッジ対象としたヘッジ取引を意味することもあるなど...