書評 藤沼 亜起 編『藤沼塾講演録 新時代を切り拓く 会計プロフェッション』

(同文舘出版刊/本体2,400円+税)

 日本公認会計士協会元会長 増田 宏一

( 36頁)

本書は,公認会計士業界のエリート教育を目指して,次代を担う有為な会計人を養成することを目的に,2016年10月に始動した「藤沼塾」(塾長は,国際会計士連盟(IFAC)・日本公認会計士協会(JICPA)元会長の藤沼亜起氏)の第1期の1年間に及ぶ活動を講演録としてまとめたものである。

今年で制度創立70周年を迎えるわが国公認会計士業界の最重要課題は,公認会計士試験の受験者の減少であり,一時期に比べると激減しており,公認会計士資格の魅力がなくなってきていることである。筆者は藤沼塾長の後,協会会長職を引き継いだ者として,世界でも例を見ない受験資格のない公認会計士試験制度により,一時は年間3千人にも及ぶ合格者を出した資格者増のための性急で無謀な仕組みの導入を止められず,近時の事態を招いた一人として責任を感じているところである。このままでは会計士を目指す若者が減ってしまうという危機感や焦りの気持ちが,会計の松下村塾とも称される藤沼塾立上げの契機になったという塾長の思いは全く共有するところである。

また,志を伝える私塾の先例として,本林 徹氏(日本弁護士連合会元会長)が主宰した「本林塾」に,同じ士業に身...