Q&Aコーナー 気になる論点(215) IASBの概念フレームワークの改正(4)

‐認識の中止‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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Q  IASBが2018年3月29日に改正した「財務報告に関する概念フレームワーク」(2018年概念フレームワーク)では,財務諸表の構成要素の定義を満たさない場合であっても認識を中止しないことがあるとしています。これは,なぜなのでしょうか。

A:

2018年概念フレームワークでは,認識の中止が,取引後に保有されている資産・負債の忠実な表現と,当該取引又は他の事象の結果,企業の資産・負債の変動の忠実な表現の2つの目的を達成しない場合には,財務諸表の構成要素の定義を満たさない場合であっても認識を中止しないことがあるとしています。

<解説>

認識の中止(1)‐2つのアプローチ

2010年改正の概念フレームワークでは,認識の中止(derecognition)を定義しておらず,また,いつ認識の中止が生じるべきなのかも記述していません(BC5.23項)。認識の中止についての議論は,通常,[図表1]の2つのアプローチが対比されています(BC5.24項)。

[図表1]

アプローチ概要支配アプローチ認識の中止は,単に認識のミラーイメージであるため,もはや認識基準を満たさなくなった(又は,もはや存在しなくなったか,企業の...