会計知識録 第2回 循環取引

解説

 公認会計士 溝口 聖規

~企業の会計・財務活動を解読~
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2019年12月にネットワンシステムズ(東一,情報・通信業)と日鉄ソリューションズ(東一,情報・通信業)が,「実在性の確認できない取引」が発覚したと公表しました。税務調査によって発覚した「実在性の確認できない取引」とは,循環取引を指します。ネットワンシステムズの第三者委員会による調査報告書によれば,同社の他に5社が絡む循環取引であったとのことです。

循環取引とは,複数の会社が互いに共謀し,商品等の転売や業務委託などの相互発注を繰り返すことで,実質的に架空の売上高を計上する取引手法のことです。循環取引では,製品や商品ではなくおカネと伝票が循環します。循環取引は古典的な会計不正の手口であり,過去にも枚挙にいとまがありません。循環取引を公表した代表的な会社は,カネボウ,加ト吉,アイ・エックス・アイ,ニイウスコー,ジーエス・ユアサコーポレーション(子会社),クラボウ(倉敷紡績),伊藤忠商事(子会社)などが挙げられます。

循環取引のスキーム

典型的な循環取引のスキームを以下に示します。

A社(首謀者)100円で仕入れた商品を110円でB...