不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第7回 不正リスク管理のポイント

KPMG FAS マネージングディレクター 林 稔

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1.不正リスク管理の重要性の高まり

不正の予防・発見・対処といった不正リスク管理に関する議論は,古くて新しいテーマといえます。振り返ってみると,不正はどの時代でも生じていました。

不正リスク管理に関する最初の公的な報告書としては「不正な財務報告全米委員会(通称:トレッドウェイ委員会)」が1987年に公表した「不正な財務報告」が挙げられます。このトレッドウェイ委員会を支援する目的で設立されたのが,COSO(トレッドウェイ委員会組織委員会)です。COSOが1992年に公表した内部統制フレームワークは有名ですが,事業活動全般にわたる広義の内部統制概念を採用するものでした。また,COSOは2004年に「ERMフレームワーク」を公表しましたが,COSOの内部統制フレームワークの概念をリスクマネジメントに発展させたもので,不正リスク管理に関する指針ではありませんでした。

そして,米国の公認不正検査士協会,公認会計士協会,内部監査人協会が共同で「企業不正リスク管理のための実務ガイド(Managing the Business Risk of Fraud: A Practical Guide)」を2008年...