<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第24回 金融緩和と財政拡大の影響(その3)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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MMT

MMTはModern Monetary Theoryの頭文字をとった略語で,日本語では現代貨幣理論とも訳されるが,現代貨幣理論という言葉ではMMTの特殊性がイメージされないので,日本でもMMTというアルファベット3文字がそのまま使われる。要は,それほどユニークなのだ。

MMTによれば,国家は徴税権があるので,いくら借金をしても全く問題ないと解釈する人がいる。またある人は,MMTによれば,国家の財政赤字こそが経済を支えているのであり,財政赤字が存在しなければ,そもそも経済は回らないのだと理解する。MMTが正しいとするならば,財政赤字は悪いことではなく,財政赤字を解消していこうという努力は必要ない。むしろ財政赤字を保つことこそが重要なのだと主張する人もいる。

リーマンショックの際の財政拡大の収束が見えない中,地球温暖化や所得格差の問題などの新たな社会問題が深刻化する中で,財政縮小ではなく,むしろ,より積極的な財政拡大を求める声が強まった。そんな中,MMTは都合の良い理論として脚光を浴びた感がある。しかしMMTは,そのユニークな発想から,主流派と呼ばれる経済学者達から異端の理論,ないしは「...