<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第64回 OCIとリサイクル(7)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 28頁)

帳尻を合わせる

帳尻を合わせるという言葉には、必ずしも良い響きはない。あの人が最近やたら親切なのは、この間の失言があったので、帳尻を合わせようとしているに違いない、とか、外国人選手は優勝が出来ないと決まってから、急に打ち出して帳尻を合わせてくるといった場合に使われる。良い響きがしないのは、過去のマイナスを何か別のもので取り返して、なかったことにしようとか、多すぎたので、ちょっと調整しようという、作為的なニュアンスが言葉の中に込められているからだ。

しかし我々経理や会計に携わる人間にとって、帳尻を合わせることは最も重要な使命である。財務諸表の貸借がバランスしないとか、期首開始剰余金が前期末剰余金と合致しないなどといったことは、あってはならないことである。帳尻は合わせて当然である。

クリーンサープラスの関係

クリーンサープラスの関係とは、貸借対照表の期末純資産と期首純資産の差額が、損益計算書の純損益と一致することをいう。この関係を維持するためには、貸借対照表に表示される資産負債の増減は、必ず損益に計上されなければならない。クリーンサープラスの関係が維持されていれば、資産・負債と損益との連携が保たれ...