<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第104回 概念フレームワーク(20)

―財務諸表の構成要素(6)―

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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いやならやめればいい

あなたが部下に向かって「いやだったら、やめてもいいんだぞ」と発言すれば、状況にもよるが、その後のあなたの会社生活は厳しいものになるだろう。たとえば難易度の高い仕事や、あるいは、誰も好んでやりたくないような仕事を部下にアサインし、その部下がその仕事に取り組むことに対して難色を示した場合、上司であるあなたが部下に対して「いやだったら、やめていいんだぞ」と発言すれば、その言葉は「いやだったら、会社を辞めてくれていいんだぞ」と発言したと受け取られる。すなわち無理難題を押し付けて退職を迫ったと解釈される可能性がある。

この場合、問題点は2つある。1つは、「いやだったら」と発言することで、部下との対話を放棄していることである。もし部下が難色を示したならば、何故難色を示したのかを聞き、より働きやすい方法がないかを一緒に考える必要がある。また、その仕事の意義をちゃんと説明する必要もある。しかし「いやだったら」という言葉からは、そのような奥行きのある対話をしようという姿勢が見られない。もう1つの問題は、「会社を辞めてもいい」という選択肢を見せることで、暗に、あなたは会社にとってお荷物で...