上場規則/スチュワードシップ・コードに関する英国の最新状況

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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日本が追いつくと英国は逆走?

金融庁は今年、海外投資家の要望に応え、スチュワードシップ・コード(以下、SSコード)において、投資家同士が協働でエンゲージメントを行う、いわゆるコレクティブ・エンゲージメントを強化するための検討に入る。また2024年3月から議論が始まっている有価証券報告書(以下、有報)へのサステナビリティ開示基準の適用については、特定規模以上の企業に義務化する方向だ。これまで、東京証券取引所の上場規則で対応が求められるコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)で、プライム上場企業とその他で適用レベルを分けることはあったが、有報において企業の規模にあわせた要件、いわゆるプロポーショナリティの考え方を取り入れようとするのは初めてのことだ。

このように日本がグローバルとのギャップを埋めようと取り組んでいる時に、日本が2つのコードや企業開示の仕組みづくりでお手本としてきた英国では、この7月にあたかもその逆をいくような上場規則の改訂が、金融行為規制機構(Financial Conduct Authority。以下、FCA)によって行われた。その理由についてロンドンで関係者に意見...